「サンー、帰ろうぜ」
「あ、わり。今日居残り」
「お前学校休みすぎなんだよ」
「うるせえ」
「今日は部活ないからカラオケ寄っていこうと思ったんだよ」
「知るかよそんなの。他当たれよ」
「まあいいや、じゃあな」
隣の席のせいで、会話がだだ漏れだ。
しかも今日の放課後を意味していたとは。
まさかとは思いつつもゆっくり帰りの用意をしていたが、予想的中だ。
授業が終わるといつもはすぐに帰ってしまうのでどれくらい人が残っているか分からなかったけれど、こんなに人がすぐにいなくなるものか。
もうわたし達以外に生徒がいない。
窓際から2列目、いちばん後ろで身を硬くして座っているのはおかしいに違いない。
窓際のいちばん後ろの夏川くんは教科書を広げ始めた。
「…これ」
「え」
「これが分かんねえ」
控えめに問題を覗く。
わたしに対しては相変わらずの真顔で怖い。


