「……ね、ねえ、どうしたの?」
誰もいない廊下にはわたしの声だけが虚しく響く。
「……燦?燦?!
なんで?なんで倒れているの?
燦!」
声をかけるだけではなんにもならないことにようやく気付き、額に触れてみた。
……熱はない。
でも、すごく苦しそうだ。
綺麗な顔が歪んでいるのは見ていられない。
……とにかく保健室に連れて行かないと。
これはわたしひとりでどうにかなることじゃない。
恐る恐る脇の下に手を入れ、肩を持ち、立ち上がると、それだけで息が上がってしまった。
「はぁっ……はぁっ……、重い……」
どんなに見とれるような顔をしていても、やっぱり男の子で、体はわたしなんかより大きくてわたしひとりでは保健室まで運べるかどうかも分からない。
……でも、何とかして燦を連れて行かないと。
「燦、大丈夫だからね。
絶対、大丈夫だから……」


