「こちらになります。
ありがとうございましたー」
「……あの、本当、ごめんね。
ドーナツくらいわたしも払えるのに」
「いいんだよ、今日くらい俺に払わせろ。
ほらこれ」
「……ありがとう」
手渡してくれたドーナツをもう一度見ると、やっぱり惚れ惚れとしてしまう。
着色料を使っていない自然のくすんだピンクのコーティングにこげ茶色の生地、それからシルバーやゴールドのキラキラしたアラザンが乗っている。
まるでひとつの作品のようだ。
「ありがとう、すごく綺麗」
「ん、見てないで食えよ、美味い」
燦が笑っているから本当に美味しいのだと思う。
わたしもドーナツにかぶりつくと、思わず笑顔が零れた。
「……美味しい」
「だろ?千鶴見る目あるよ」
「ふふ、それは言い過ぎだよ」
ドーナツにもう一口かじりつきながら、自然に甘い空気になっていたことに気付いた。
あれ、わたしにしては意外だ。


