「ここ」


「……ここ」


「降りるぞ」





そう言いながら燦がわたしの手を取り歩き出した。




なにこれ。どういうこと。




学校にいる時はほとんど喋ることもなければ登下校の時に毎日手を繋いだり、甘い空気になることはない。




なのに今、燦はなんでもないことのようにわたしの手を繋いでいる。




駅のホームは閑散としているとまではいかないけれど空いているからお互いに見失うことはない。




……嫌いだったら、こんなことしないよね。




でも、恥ずかしいけれど、それ以上に嬉しい。




駅から歩いているだけなのに、すごく幸せで大切な時間に思える。




「どこに行くの?」


「んー」


「……秘密?」


「ん、秘密。もう少しだから」


「うん」


「千鶴は他に予定ないのか?

ミホとアヤと遊ぶ約束とか」


「年が明けたら遊ぶ約束している」


「仲良いもんな、3人」


「うん。2人とも、わたしのことを見た目で判断しなかった。

初めてだったからすごく嬉しかった。

ずっと大事にしたい友達」