ドンドンッ

「?!」

音楽準備室のドアが外側から思いっきり叩かれていた。

やばい。この状況を見られたら、1発アウトだ。

「渚?!大丈夫か?!変な声したけど!」

柊だった。
体が一気に暖かくなった。

「柊、大丈夫だと思う?俺と2人きりだけど」
「…は?兄貴、お前またなにかしてんのか?!」
「うーん、今回は渚ちゃんが無自覚に煽ってきたからね」

煽ってない!と言いたくても、口を塞がれてるから、何も言えない。
どうしたら…

と思っていたら

準備室のドアが吹っ飛んできた。

「うわぁ…柊、派手に壊したね…」
「は?!そんなんどうでもいいんだよ!てめぇ、渚になにした?!」
「別に?付き合いたてのふたりに、試練を与えてあげよっかなと思ってね」
「別にじゃねぇだろ!手錠かけてんじゃねぇか!」

この光景、前も見た。
あの時は自分の気持ちなんて言わなかった。怖かったことも、心配かけてごめんってことも。

2人の間に入って

柊の顔を見て伝えた。

「怖かった!めっちゃ怖かった!」
「!!…ごめん、すぐ助けらんなくて…」
「でも、柊が来てくれた瞬間、めっちゃほっとしたんだよ、すぐとか遅いとか関係ない、来てくれて嬉しかった」

柊は泣きそうな顔をしながら私を抱きしめた。

「来るに…決まってんだろ、好きなんだから」
「柊っ…!力強い!苦しい…」

先生と目が合った。

先生はおちゃめにウィンクを飛ばした。

(…先生は柊の愛を確かめるためにやったのかな)