次の演奏は花山南高校吹奏楽部ですっ!〜部活大好き彼氏が甘すぎる〜

ずっと面倒だと思って、避けてきた道だったから。

「…琴乃ちゃん、聞くけど」

志乃先輩が琴乃ちゃんの肩に手を置いた。

「……なんですか」
「今から練習して、柊くんを越えられると思う?」
「…あの人と同じくらい練習すれば」
「でも、あなたが練習する期間も、柊くんは絶対練習を止めないよ?」
「だからって、あんな居なくてもいいような小物をやるなんてっ…!」

そこまで言うと、琴乃ちゃんはぎゅっと口むすんで俯いた。

「気持ちも、上手さも、どっちも大事だけど、今優先すべきなのは、上手さなの」
「じゃあ…!」
「でも、その「上手さ」には、表現力と周りからの信頼も入ってる」

志乃先輩は優しい口調で、でも悲しんでるような、怒っているような調子で言った。

「それに、小物を「居なくてもいい」なんて言う子に、ティンパニはやらせない」

私は座り込んだまま、琴乃ちゃんに訴えた。

「…いらないパートなんて無いんだから、いらない人も居ないんだからね」

柊はずっと黙っていたけど、何か言いたいことがあるのかこっちに向かってきた。


そして、大きく息を吸って

はっきりと言った。

「渚、好きだ」