次の演奏は花山南高校吹奏楽部ですっ!〜部活大好き彼氏が甘すぎる〜

「そういえば、ちゃんと自由曲聴いてなかったね」

そういえばそうだ。個人では聴いていたけど、楽譜を見て皆で…というのはしていなかった。

「じゃあ、琴乃ちゃんにも聴いてもらいたいし、流そっか」

先輩はスマホで調べて流してくれた。

曲名は「たなばた」。
トロンボーンのSoloから始まり、テンポを変えながら様々な楽器が織り成す、壮大な世界観を楽しむことが出来る曲だ。

鍵盤とティンパニには目立つsoloがあり、小物や太鼓系もテンポを作る上でとても重要な役割をしている。


聴き終わり、琴乃ちゃんに感想を聞くと

「クレシェンドする時やテンポの変わり目に出てくる、このずっしりとした音はなんですか」

と逆に質問された。

「これはティンパニだよ」

教えると琴乃ちゃんは、ふーん、と微妙な返事をした。
何を思っているのか分からない子だけど、きっと心を動かされたんだろう。

そんなふうに漠然と考えていた。


その日は合奏を見学してもらい、帰りのミーティングで先生が琴乃ちゃんを紹介して終わった。


──────そして
その時がきてしまった。


琴乃ちゃんが入部して1週間。
そろそろ合奏に出られるくらいに譜読みが追いついていた。

そして、琴乃ちゃんの合奏デビューがきた。

「頑張ろうね!琴乃ちゃん!」

琴乃ちゃんは、志乃先輩への問いかけにも気づかず、気もそぞろだった。

様子がおかしい…?

何かあったんだろうか。