次の演奏は花山南高校吹奏楽部ですっ!〜部活大好き彼氏が甘すぎる〜

彼女は、皮付きタンバリンを手に取ると

その場にあったスティックで叩き始めた。

「え?!ちょ、ちょっと」
「すみません、違うんですか?」

琴乃ちゃんの破天荒ぶりに驚いていると、柊が音楽室に駆け込んできた。

「ま、間に合った!おはようございます、志乃先輩!渚!」
「あ、おはよう」
「おはよう柊くん!」

挨拶を交わす間にもタンバリンをスティックで叩く琴乃ちゃんを、柊が止めに入った。

「おわっ!待って待って!皮破れる!突き刺すのダメ!」
「え、じゃあどうするんですか」
「こうやって…」

後ろから手を持って教える柊を見て、胸がキュッとなった。

───まただ。

痛い、苦しい。

「じゃあドラムと同じように叩く楽器って無いんですか?」

琴乃ちゃんが聞いてきた。

「うーん、スティックを持って叩くのは、ドラムやスネアくらいかなぁ。あとは、マレットでティンパニやバスドラを叩いたりするよ」
「それだ!」

琴乃ちゃんは嬉しそうな顔をして、志乃先輩を見た。

「それなら叩けます!コンクールに出させてください!」

志乃先輩は困ったように笑った。

「…まずは、小物の練習だね!小物が出来てこその大型楽器だから」

琴乃ちゃんは納得がいかない顔をしつつ、

「…はい…」

と答えた。

「で、誰?あいつ」

と、何も知らない柊に経緯を説明して、その日の練習が始まった。


お昼休憩の時、先輩がふいに話し始めた。