次の演奏は花山南高校吹奏楽部ですっ!〜部活大好き彼氏が甘すぎる〜

まずい。逃げたい。

「すみません、渚さん、この後ちょっと手伝い良いですか?」
「え?この後ですか…?」

舞奈と絵美子は、私がお手伝い係になったことを知らない。
不信感を抱かせて、変に話を聞かれることになる。

「えっとこの後はちょっと…」
「あ!なるほど!渚、お手伝い係になったんですね!」

…説明済かよ。

睨みつけると、私を横目で見てニコッと笑った。こいつ、確信犯だ。

「じゃあ借りてきますねー」
「はーい!渚じゃーねー!」
「渚ちゃん…!またあした…!」

先生に引きずられながら、バス停近くのショッピングモールに入る。
階段下の誰もいないスペースに連れ込まれた。

バンッ

頭スレスレの壁に手をつかれ、身動きがとれなくなった。

「お前、さっき俺の事ペットって言った?」
「ご、誤解です!そういう意味じゃないです!」
「…ペットにしてやろうか?」
「ご遠慮!しときます!!」

殺されるんじゃないかと思うほど睨みつけられ、怯えていると

「これ、見本の五線譜」
「へ?」
「買いに行くよ、お手伝い係さん」

普通に手伝いを頼まれた。

「これって…」
「コンクールのための五線譜。編曲するから書き留めるための」

…なんだ、先生もやばいところだけじゃないのかも。
生徒思いの、良い先生なんだと実感した。

「コンクール、何吹くんですか?」
「まだ決まってないけど、僕らのチームワークと表現力を魅せつけてやる、それだけ」

あ、似てる。
先生と柊は、やっぱり兄弟なんだ。