次の演奏は花山南高校吹奏楽部ですっ!〜部活大好き彼氏が甘すぎる〜

私たちが位置につくと、客たちがざわめき出した。

「顧問が不祥事で…」
「落ちこぼれの…」

うるさい。私たちの努力を見ていないやつが、何言ってるんだ。

そっと横を見ると、志乃先輩が少し俯いていた。

「志乃先輩?どうしたんですか?」
「…実は私、親に部活行くの反対されてて…、こうなるからって分かってたけど、やっぱり怖くて…ごめんね、こんな先輩で」
「志乃先輩…」

私はなんて声をかけたらいいか分からなくなった。だって私は、そこそこだからとこの部に入ろうとしたから。中学も、そんな感じで続けてたから。

全力で続けようとは、思ったことがなかったから。

ぎゅっ

私と先輩の手を握ったのは、柊だった。

「…誰がなんと言おうと、俺らの演奏で心を動かす。それでいいじゃないですか」

柊はじっと前を見つめていた。

あぁ、そうか。

柊が初め私に向けていた眼差しは、こういうのかもしれない。

柊は、かっこよかった。
私はこうなりたい、と言う憧れを初めて抱いた。

先生が指揮棒を上げた。
私たちはそれに合わせてブレスする。

先生が振り下ろした瞬間

駅前に私たちの音楽が響いた。

振り向く人、立ち止まる人。
目を見開く人、駆け寄ってくる人。

動かせ。揺らせ。奪え。

私たちの音で、人の視線を、心を。

奥まで、響け。