その時だった。

子供を抱えたお母さんが、診療所に飛び込んできた。

必死に、私に向かって何かを訴えている。

慌ててアリさんが、話を聞いた。

「チナ、子供ぐったりしている。汗もすごい。」

私は急いで、子供をベットに寝かせた。

タオルで脇の下を拭き、熱を測ると39℃を示した。

「まずは解熱剤と、水分補給。」

奥の薬の棚から持ってきた点滴を、私はその子に施した。

「これでまずは、様子を見ましょう。」

子供のお母さんは、心配そうに子供に寄り添った。


けれど本当の大変さは、ここからだった。

「チナ!こっちも同じだ!」

アリさんに言われ振り返ると、ぐったりとした子供を抱えたお義母さんが、列をなしていた。

「なんだ、なんだ?風邪の集団発生か?」

土井先生が、次から次へと聴診器で胸を診て、頭を振った。

「風邪特有の音が聞こえない。血液検査をしよう。」

「はい。」

私達は注射器を用意すると、子供達の腕から血液を採っていった。