「その顔は何かあったね。」

「分かるの?」

「これでもチナの婚約者だよ。分からない訳ないでしょ。」

その優しさに、キュンとする。

「教えてよ。チナの仕事の事も知りたい。」

その言葉に、私は決心した。

「あのね。別に何かしてほしいって訳じゃないんだけど。」

「うん。」

「村人たちを診療していると、子供達が多いの。きっと弱い者が次々と病気にかかっていくのね。でも一番可哀相なのは、それで命を落としていく子供がいるって事。」

「そうか。」

「この前は、肺炎で命を落としたわ。今度は心臓病。二人共、首都に来て検査や手術が受けられれば、助かったかもしれない。」

「どうして、検査や手術が受けられないの?」


その時だった。

お風呂の外で、騒がしい音がした。

「ジャミレト様、落ち着いて下さいませ。」

「お放しなさい!」

私はアムジャドに寄り添った。

ジャミレトさんは、お風呂の中に入って来て、こう叫んだ。

「チナ!もう許さないわよ!」