「善は急げというだろう。」

前も思ったけれど、アムジャドって何でそんな難しい言葉、知ってるんだろう。

「よし!明日、宮殿へ行こう。決まりだ。」

アムジャドは、心なしか嬉しそうだった。

そうだよね。自分の好きな人が、父親に会うんだもの。

結婚の第1歩って感じだわ。

「ああ、楽しみだ。きっとチナの事、父王も気に入って下さるはずだ。」

この期待に、何とか応えないとね。


その日の夜は、久しぶりに緊張で眠れなかった。


翌日、テントの中でアラブの服に着替えて、途中診療所に立ち寄った。

「なに?父親に会うだと?」

「ヘマするなよ!」

津田先生も土井先生も、励ましてくれているのか、全く解らないひとこと。

「行ってきます。」

「頑張れー!」

私は二人の声援を背に、モルテザー王国の宮殿に向かった。