「だがなぁ。千奈がそうだとしたら、これは大変な恋愛になるだろうよ。」

「土井先生……」

「あの方は、私の医療を助けてくれた。思いやりがあって、誠実で、頼もしい。この国の誰もが、皇太子を好きでいる。」

アムジャド。

そんなにこの国の人に、慕われているのね。

「そんな皇太子を、この国は離さないだろう。そうなると、千奈と結婚するのは、難しいのではないかなぁ。」

胸がズキッとする。

「妾妃であれば、まだ可能性はあるかも。」

イマードさんも言っていた、”妾妃”

でもアムジャドは、それを望んでいないって。

私はクスッと笑った。

「なんだ?悲しくないのか?」

「そう言えば私、未来の花嫁と言われても、はっきり結婚しようなんて言われてないんです。」


そう。日本で過ごした日々は、夢物語だったの?