「とにかく! 佐々木と関わるなって言ってんだよ。アイツとデートだからって浮かれてそうやって化粧なんてして……」
「……っもう、しょーちゃんなんて大キライ」
「え?」
「しょーちゃんの分からず屋! もう知らないっ!」
そう吐き捨てるように言うと、華那は方向転換して立ち去ろうとする。
俺は咄嗟にその華奢な手首を掴んだ。
振り返った華那の目からはポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちる。
「待てって! 何で泣いてんだよ……」
そんなに泣くほど……アイツのことが好きなのか?
「もう私のことなんて放っておいてよっ……」
「放っておけるワケないだろ!」
華那は力ずくで俺の手を振り解いた。
「私たちただの幼なじみなんだから……だからもう放っておいてっ……!」
逃げるようにその場から立ち去り、俺は廊下にポツンと取り残される。


