無言で音楽を付け 無言で化粧を直し
無言で服を着替える。
そして無言で鏡を見ると 別れを告げられた彼に
逢いに行くというより
デートをしにいくような姿が映っていた。

(本当ならこれでデートできたのにな)

これで会うのが最後だとおもったら
どうでもいい格好では会えなかった。
今思うと何でわざわざ時間をかけてそこまでしたんだろうと。
どうせ最後ならめちゃくちゃ可愛くして彼にみせたかったんだろう。
こんな私を捨てていいの?って
見せつけてやりたかったんだろうな。

家を出る前にお気に入りの香水をつけて
電気を消し
ヒールを履いてタクシーを呼んだ。

タクシーの中で携帯を開きLINEを見てみると
お揃いのアクセサリーのトップ画にしていた彼の画像も消え 真っ黒になっていた。


愛羅「今から行く」
そう連絡を飛ばしてむかった
けれど一向に連絡は来ない。
こういうのが1番めんどくさい。
自分が取りに来てって言ったくせに
なんでこんな時に限って連絡をすぐ返せない?
あんなに平然を保っていた心も
いらだちを隠せず 普段はしない貧乏ゆすりを
足を組みながらしていた。

そうしているともう自宅前。
運転手にお金を渡して家の前で1人。
まだ既読はつかないまま。
(ほんと。うちなにやってんだろう)
ふと笑いがこみあげる。

(LINE〜♬︎)
やっと連絡が来たと思えば…

彼「今向かってる」

家にいないことすらしらなかったけど
普通、人が来るってわかってたら家にいるよね?
イライラが止まらなかった。

愛羅「もう家の前にいるから」
それから既読がついたものの
10分ほどたってもまた連絡が来ないまま
家の前で待たされていた。