✳✳✳


「………さと。ねぇ、真斗?」

「!」

名前を呼ばれて、振り向くと彼女が心配そうにこちらを見ていた。

どうやら僕は、過去の記憶に取り込まれていたようだ。


あの出来事が嘘のように。ときは流れ――

出会いから約十一年、あの夜から半年が経過していた。

「ボーっとしてたけど、大丈夫?」

彼女が――明日美が僕の目元をなぞる。