しばらく僕の目をまっすぐに見つめたあと、
やがて、肩を震わして、今度こそ僕の腕の中に体重を預けてくれた。
「……ありがとう」
それを切り出しに、ポツリ、ポツリと彼女は語り始めた。
ここ最近うちの部署は、大手企業との定期契約を控えていた。
その担当は、部長と、そのフォローという形で金里さんが担当していたのだけれど。
事実情、ほとんどの仕事は彼女に投げられていたようなものだった。
大切な取引先であり、会社としても何としても成功させたい案件。
打ち合わせの度に、相手側が部長ではなく彼女を指名していたらしい、と聞いたのはつい先日のこと。
おかしいと感じつつ、近々様子を聞こうとしていたが……遅かった。



