「退職……? なんでいきなり」 「いきなり決まったんだよ。……ほら、しっかり働け! あいつの穴埋めは大きいぞ」 「――部長!」 部長はまるで詳細を聞かれるのを拒むように、僕の声を振り切ってフロアを立ち去って行く。 いきなり、辞めただって? 一瞬、結婚というワードが過ぎったが、すぐに頭を振る。 そんな話しも聞いていなかったし。むしろ、スマホを見てはため息をついているほうが多かった。 それに、もし、するのであれば 『富丘くん、聞いて』 とこっそり教えてくれたに違いない。