その後、少しだけ夜風を浴びて、彼女を家の近くまで送り届けた。 「ありがとう、富丘くん。それと、助かった」 申し訳なさそうに笑う彼女は、そう告げて涙の余韻を感じさせず、夜の闇に消えていく。 強いけど……いつかその強さが壊れてしまわないか、僕は心配だった。 「また明日……」 誰もいない車内に僕の声は落ち、引き止めようとしていた僕の手は宙を舞って、ハンドルへと戻った。