片思いならこの場で奪うのが鉄則なのに。 長年の自分の想いが否定されたな気がして、思わず反論していた。 好きなものは好き。彼女だって、僕だって。 君が欲しいけど…悲しませたくないのも事実で。 夜空の映り込む彼女の美しい瞳には、みるみる涙の膜が張りはじめた。 じっと見つめて、涙があふれるのを待つ。 今は…今だけは、拭えるのは僕だけだから。 「……頑張ってる…なんて初めて言われた。」 ぽろり。ぽろり。 そっと手を伸ばしかけて……怖くなって思い留まる。