「………酔ってる?」

無駄だと思うが念の為聞くと、案の定彼女はふるふると首を横に降る。

「酔ってないよ」

「……」

酔っぱらいはたいていそういう。

「富丘くんはいつも飲まないよね?」

「………好きじゃないから」

とカッコつけたものの、あまり酒には強くない。

仮に、だが。
もし酔った状態で、彼女と二人きりになってしまったら、何をするか分かったもんじゃない。

恋情を拗らせすぎてる僕は、そんなイタい妄想にだって真剣だ。

この十年、必死にこの距離を守ってきたんだ。

そんなことで、無駄にはしたくない。