――しかし、そんな僕にも転機が訪れた。

その日は、会社の創業祭かなんかで、会社から近くのホテルで小さな飲み会が開かれたときのこと。予想もしていなかった幸運が舞い込んだのだった。

「あ、富丘くん。お疲れさまぁ」

喫煙スペースへ向かう最中。前方からほんのり頬を赤く染めてやってきたのは、なんと金里さんだ。

「お疲れさま」

どこか気の抜けた、トロンとした目元。肌は血色が良く、色気ばんでいて。口調なんて、いつもの数倍砕けている。

ちょっと、スキだらけじゃないか?

これで他の男性社員と話してたのかと思うと…ハラハラする。