――くだらないと思う日々に彩りを感じられたのは、いつだって彼女の笑顔があったからだった。 上京して、もう何年が過ぎただろうか。 混み合った駅をすり抜け、満員電車に揺られ、今日も勤め先へと足早に歩行を重ねる。 僕はこの人の多い出勤時間がとても苦手だ。 「おっすー。富丘」 電車を降りて、徒歩数分。 いつものように勤め先のオフィスビルを目指していると、ビルを目前としたところで上司である営業部長に声をかけられる。