私は祈っていた。
正直好きなのかどうかは分からない。
だけど同じクラスがいいなって。

私は坂本そら。
田舎に住んでるため、中学の人数は年々過疎化している。
だから、あの人と同じクラスになれるかもしれない。
あの人とは、谷崎 蓮。
1年生の時同じクラスで、同じ部活。
クラスも部活も一緒のわりにそんなに話さなかった。
2年生は修学旅行がある。
同じクラスだったら一緒の班になれたらいいなとか思ったり。

色々考えていると学校に着いた。
玄関にはもうクラス表が貼られていた。
私はクラス表を見て心の中でガッツポーズをした。
だって一緒だったから。

「そらちゃん、おはよう」
「陽菜ちゃんおはよう!1年間よろしくね」
陽菜ちゃんこと松浦陽菜は同じ部活の子。
陸上部に入っていて、唯一同じ長距離の子だ。
「そら、一緒だったね!」
「彩もよろしくね!」
彩こと早川彩は幼稚園からの幼なじみ。
だが幼稚園、小学校と同じクラスになることがほぼなかったからあまり話してはない。

2年生のクラスは良さそうだった。
強いて言うなら問題児が多いところは嫌だけどそこは目を瞑っておこう。


ほんとうに谷崎のことが好きなのかどうかは分からない。
ただ、確実に意識はしていた。
何をするにもガサツだった私が意識するようになってから何事にも丁寧にしていた。
例えば、机やロッカーの中を綺麗にするとか教科書を乱暴に扱わないとか綺麗な字を書くとか見ているかは分からないがいつどこで見られてもいいようにしていた。
私の顔面はクラスの女子の中で1、2番目にブスだと思う。
顔はどうしようも出来ないから性格だったり、普段の行動、女子力を極めようと考えた。


進級から1ヶ月くらいがたった。
「来週は調理実習で卵焼きのテストをします。」
先生の言葉に私はため息しか出なかった。
料理は本当に出来ない。
というか、バレンタインのチョコを作る時ぐらいしか料理をしない。
手先が不器用でドジで理解力がない私には料理は不向きだ。
ただ、卵焼きは練習すればまだ何とかなりそうな感じがした。

──1週間後
家でやると最初よりかは遥かに上達した。
練習すれば違うのかなと調子乗ったことを思っていた。
テストは途中まですごく順調だった。
でも全然卵が焼けなくてコンロを見ると火が消えていた。
つけてもつけても火がつかない。
先生の手助けもあり何とか作り上げたが形はあまり良くなかった。
味は悪くなかったけど、テストは見た目で評価される。
点数はそこら辺の男子より低かった。
「俺、坂本より点高いわー!」
男子はデリカシーっていう言葉を知らないのかって言いたくなるくらいでかい声で言われた。
これはただの公開処刑だ。
谷崎はというと満点だった。
性別入れ替えた方がいいんじゃないとか思ってしまった。
「女子でこれは低いだろ(笑)」と谷崎までバカにされた。
女子は全員料理ができるという暗黙の了解みたいなのは出来ない人からしたら辛いだけだからやめて欲しい…。
まぁ、日々料理をしないのがいけないんだけど。
この卵焼きのテスト以来卵焼きを作るのが嫌になって作らなくなった。
好きな人が出来れば料理は自然とすると聞いたことがある。
ただ私は失敗したくないからキッチンにはほとんど立たない。
失敗することは私のプライドが絶対許さないから。
これは私の自尊心が強すぎるのか、谷崎のことは好きでは無いのは分からない。


6月に入り修学旅行の話がチラチラ出てきた。
嬉しいことにぼっちではない感じだった。
修学旅行でぼっちほど辛いことはない。
女子は女子で男子は男子で誰となるかで話が盛り上がっていた。
私たちは仲良いグループで誰と組むか話していた。
女子2人、男子2人だ。
私たちのグループは6人だから丁度よくわけれる。
色々話し合った結果、みここと同じ陸上部の沢田 美古都と一緒の班になった。
「男子どーする?」
問題はそこ。
他の班と被らないように考えないといけない。
「松山と石井のところは嫌だわ」
「森下のところは別のところが一緒だよね?」
なりたい人よりもなりたくない人の方がポンポン出てきた。
でも2人ともなってもいい人がいた。
「やっぱり、谷崎と村上がいいね。」
満場一致ってやつ。
ただ、1つ問題があった。
「でも、ななとなこが取ってるよね。」
「あ、そうか。」
ななこと河村七々となここと高島奈子は仲のいいグループの2人。
「どーしようか…。」
中学校の修学旅行なんて人生に1度きり。
なりたい人と一緒の班がいいから妥協はしたくなかった。
でもそれはみんな思っていること。
「奪うか。」
みこは大胆なこと言い出した。
「でも喧嘩になったらめんどくない?」
私は自分で言うけど平和主義だ。
昔から喧嘩ばかりして疲れたからここ最近は身を引くことが多かった。
ななとは小学校の頃から喧嘩ばかりしたからもう懲り懲りだ。
「さすがに自分らが勝手には決めんよ。男子2人の意見を聞いてからよ。もし2人がななたちがいいって言うならそうするし。」
「それだったら文句はないか。男子にも決める権利はあるし。」

放課後の部活で私たちは早速聞いてみた。
「ねぇねぇ。修学旅行の班もう決まっとる?」
私は誘うのが苦手だからみこに聞いてもらった。
「あー河村と高島に誘われたわ。」
だよねーと思いつつ、頑張って誘った。
「私たちも一緒の班がいいなって思っとるんじゃけど…どう?」
どう?と聞いても決まってるから何も言えないか…。
「ななたちと私たち、一緒の班になりたいのどっち?」
私は考えるよりも言葉に出てしまった。
「でも高島怒ったら怖いし、めんどそうだよな〜。」
村上が私の圧に負けたのかそう言った。
「まぁそうだな」
「じゃあ一緒でいい?」
「あぁ。」
めっちゃ強引な手を使って一緒の班になった。

「よかったね!」
そう言って2人で話しててホッとしたのも束の間。
「あ!ななとなこどーする?」
あの2人を怒らせたら正直めんどくさい。
私たちは考えた。
「逃げよう!」
逃げようと言われてもいつかは話さなければ行けない時くるしどうしよう。
「逃げときゃーなんとかなるって。」
「そうじゃね。」
私たちは今逃げることしか出来ないのかなと思った。

──次の日
今は昼休みだがななとなことは一言も喋っていない。
陽菜ちゃんと彩には言ったが、到底ななとなこには言えなかった。
でも、私たちがほぼ無理やり変えてもらったようなものだから私とみこの口が言わなければいけないことは分かってる。
ただ、怖かった。
休み時間になる度、私たちは2人から逃げている。
陽菜ちゃんと彩はまた逃げてるって呆れた顔をしていた。

「やばい、2人来たよ…」
何回目だろうか。
「逃げろーーー!!!」
「人生で1番の修羅場じゃ!」
「そうじゃね」
私たちはまだ14歳。
14歳で人生は語れないのに人生で1番とか言っちゃって。
2人は怖いけど、こうやってバカみたいに学校走り回れるのは中学生くらいまでだなと思うと何となく青春を感じた。