奇跡を起こした12の月光




~side愛斗~



「音川 弥生…ねぇ〜……」



あいつは一体何者なんだ?



俺がそう感じたのは、あいつを初めて見た日…即ち入学式のこと。



新入生代表として上がって来たあいつ、第一印象は、クールな女だった。



だが、教室に入ってから、体育館よりも近くで見てみると、想像以上にきれいな顔立ちをしていた。



くっきり二重に、ぱっちりとした目。



鼻はすっと通っていて、ぷっくりと膨らんだ桜色の唇。



顔は本当に小さくて、スタイル抜群だった。



それにプラス頭までいいとか…。



俺は、中等部までは、筆記も、実技もいつも成績はトップだった。



それに、自分で言うのもあれだけど、顔はだいぶ整っていて、運動神経もいいので、正直モテていた。



毎日のように、呼び出されては告られていた。



そんな自分が人生で初めて、他人に負けたような気がした。



高等部から、ふらっと出てきて一瞬にして俺の座を奪っていった。



まぁ、相手は女だから、奪われたのは、1位の座だけだけどな。



そんな女に俺は興味が沸いた。



だから、すぐに自分の専属の使用人・蒔羅(シラ)に、あいつのことを調べてもらった。



蒔羅は、とても優秀な人だった。



蒔羅に一言いえば、早急に対処してくれるし、蒔羅に調べられないものはないと言っていいほど、優秀かつ忠実な使用人だった。



その蒔羅でさえも調べられなかったらしい。



なにも、音川弥生のデータには全てロックがかかっていたという。



それも615桁のパスワードが付いていたという。



俺はこの時から、あいつは何者なのかという疑問があった。



俺は、蒔羅にお礼を言って、考えた。



蒔羅が無理だったなら、直接聞くしかないな。



そう決意して、俺はチャンスを伺った。



あいつは警戒心が強かった。