奇跡を起こした12の月光




今はまだ婚約者という関係にもかかわらず、それらしい事はしていない。



付き合うって、どんな感じなんだろう…



不安はあるけれど、彼を信じてみようと思う。



「えぇ。もちろん。こちらこそこれからも一緒にいてください。」



そう言って、私は愛斗をぎゅっと抱き締め返したのだった。



「ねぇ、弥生。」



首を傾げる私に、愛斗はいたずらっ子のような顔をして、耳打ちしてきた。



「俺、可愛い弥生ちゃんにキスしたい。」



だめ…?



耳打ちが終わったと思ったら、顔を覗き込まれて、子犬のような表情で私を見てきた。




あまりの情報量の多さに、頭はパンク寸前。



私は恥ずかしさに襲われて、慌てて愛斗と距離を取ろうとした…



が、



小さな反抗は呆気なく散った。



腰に手を回されて、身動きが取れなくなったのだ。



顔は近いままだし、さっきは、き、キスとか言われたし…



「ぷはっ!」



愛斗が急に吹き出したかと思いきや、クククと肩を震わせて、笑いだした。