今はまだ婚約者という関係にもかかわらず、それらしい事はしていない。
付き合うって、どんな感じなんだろう…
不安はあるけれど、彼を信じてみようと思う。
「えぇ。もちろん。こちらこそこれからも一緒にいてください。」
そう言って、私は愛斗をぎゅっと抱き締め返したのだった。
「ねぇ、弥生。」
首を傾げる私に、愛斗はいたずらっ子のような顔をして、耳打ちしてきた。
「俺、可愛い弥生ちゃんにキスしたい。」
だめ…?
耳打ちが終わったと思ったら、顔を覗き込まれて、子犬のような表情で私を見てきた。
あまりの情報量の多さに、頭はパンク寸前。
私は恥ずかしさに襲われて、慌てて愛斗と距離を取ろうとした…
が、
小さな反抗は呆気なく散った。
腰に手を回されて、身動きが取れなくなったのだ。
顔は近いままだし、さっきは、き、キスとか言われたし…
「ぷはっ!」
愛斗が急に吹き出したかと思いきや、クククと肩を震わせて、笑いだした。
