「桜…。」



俺は、弥生の眠っているベットの手前を見た。



そこには、まだ横になっているが顔をこちらに向けている桜がいた。



「ついさっき、桜が目を覚ましたのよ。呼ばれたから急いできたわ。」



上品にニコリと笑う椿様。



「愛くんは目を覚ましたかい?」



「はい、彼もつい先程。」



俺は、緊張しながらそう答えた。



目の前にいるのは、弥生の両親の前に、国王陛下と、その奥様だ。



「そんなに緊張しないで?それより、いつも弥生に会いに来てくれてありがとうね。私たちは毎日来られる訳では無いから、愛斗くんが来てくれるのはとても嬉しいわ。」



椿様のその言葉に李桃様も、頷いた。



「とんでもないです。そのくらいしか、俺には出来ないので…」



弥生が最後の最後に、一人で頑張っていた時、俺はその下で意識を失っていたのだ。



目が覚めて話を聞いた時、何も出来なかった自分を後悔した。



『弥生は愛斗くんのこと、そんなふうに思ってないわよ。』



桜は俺の心を見透かしたように、言った。



『むしろ、感謝していると思うわ。毎日こうしてきてくれて、そしてあの時守ってくれて。』