奇跡を起こした12の月光





「もう大丈夫、ありがとう。」



私は、愛斗の胸から顔を上げ、笑って見せた。




酷い顔だったと思う。




あ、愛斗の服、濡れちゃったや。




「ごめんね、愛斗。服、濡らしちゃった。」




私がそう言うと、目の前が真っ暗になった。



「えっ、ちょ…愛斗!?」



愛斗に再び抱きしめられたのだ。



「…ぃ、……だ」



「何?愛斗。もっかい言って?」



なんて言ったんだろう…



ちゃんと聞こえなかった。



すると、今度は少し体を離し、身を合わせて言った。



「弥生、好きだ。」



──ドクンッ



大きく心臓がはねた。



え…いま、愛斗、好きって言った…?



「うそ、でしょ?」



「本当だよ。俺、弥生が好き。」



目を合わせながらも少し照れた様子で彼は言った。



なんで、今言ったの?



明日大きな事があるというのに。



もしかして、婚約者で、パートナーだから?



それで、明日のために今言ったの?



でも、愛斗の目は本気だ。



とてもそういう理由があるとは思えない。



「別に、婚約者だからとか、パートナーだからとか、明日のためにとか、思ってないからな?」