「もう大丈夫、ありがとう。」
私は、愛斗の胸から顔を上げ、笑って見せた。
酷い顔だったと思う。
あ、愛斗の服、濡れちゃったや。
「ごめんね、愛斗。服、濡らしちゃった。」
私がそう言うと、目の前が真っ暗になった。
「えっ、ちょ…愛斗!?」
愛斗に再び抱きしめられたのだ。
「…ぃ、……だ」
「何?愛斗。もっかい言って?」
なんて言ったんだろう…
ちゃんと聞こえなかった。
すると、今度は少し体を離し、身を合わせて言った。
「弥生、好きだ。」
──ドクンッ
大きく心臓がはねた。
え…いま、愛斗、好きって言った…?
「うそ、でしょ?」
「本当だよ。俺、弥生が好き。」
目を合わせながらも少し照れた様子で彼は言った。
なんで、今言ったの?
明日大きな事があるというのに。
もしかして、婚約者で、パートナーだから?
それで、明日のために今言ったの?
でも、愛斗の目は本気だ。
とてもそういう理由があるとは思えない。
「別に、婚約者だからとか、パートナーだからとか、明日のためにとか、思ってないからな?」
