私は、少し震える手を何とか抑え、電話をかけた。
以外にもお父様は早く出てくれた。
「弥生、どうした?こんな時間に。」
あー、全てを優しく包み込んでくれる落ち着いた声。
この声、好きだな。
父親だから余計かしら。
「あー、うん。あのね、もうしってるかもしれないけど、自分の口から伝えたくて。」
私は口をキュッと結んだ。
「ちょっと待ってろ。今みんなに聞こえるように切り替えるから。」
お父様のその声を聞きながら頭の中で伝えることを整理していた。
でも、緊張しすぎてあまり上手く整理できない…
落ち着け…
心の中で、必死に落ち着けようとしていると、ふと、右手に温もりを感じた。
驚いて、握られている手から目線を上げていくと、落ち着かせるように、応援するように、優しく微笑んでいる愛斗と目が合った。
瞬間、今までバクバクだった心臓が普段通りにゆっくり正常になっていった。
「……愛斗」
聞こえるか聞こえないかの声でそうつぶやく私。
聞こえていたのかは知らないが、握る力が少し強くなった。
