奇跡を起こした12の月光




耳元で水無月くんが私の名前を呼んだ。



え…?!



ちょっと待ってよ!



「なに……?」



頭の整理が追いつかない。



私絶対今顔が赤い気がする。



「何って名前呼んだだけだよ?」



そうやってサラッと言ってのける水無月くん



私は彼の胸元を手で力いっぱい押した。



さすが水無月くんも男の子だ。



ビクともしない…



「……どいて。離れて。」



「やだ。弥生が俺の名前呼んでくれるまでどかないし離れるつもりない。」



私がいくら水無月くんを押しても動じない。



逆に私の両手が、彼の片手に捕まってしまった。



これだと、ほんとに呼ぶまで離してもらえない。



呼ばなくてはいけないの?



水無月くんのことを名前で?



他に方法は…?



…ダメだ。



この状況についていけなくてそれどころでは無い。



「ほら、早く呼んでよ。“愛斗”って。じゃないとほんとに離さないよ?」



うぅ…



水無月くんが耳元で何回もそう話してくる。



もう、無理だわ…。



この状況から早く抜け出したい…。



私は決心した。



「…早く。呼んでくれないの?婚約者さん。」



水無月くんはすごく楽しそう。