耳元で水無月くんが私の名前を呼んだ。
え…?!
ちょっと待ってよ!
「なに……?」
頭の整理が追いつかない。
私絶対今顔が赤い気がする。
「何って名前呼んだだけだよ?」
そうやってサラッと言ってのける水無月くん
私は彼の胸元を手で力いっぱい押した。
さすが水無月くんも男の子だ。
ビクともしない…
「……どいて。離れて。」
「やだ。弥生が俺の名前呼んでくれるまでどかないし離れるつもりない。」
私がいくら水無月くんを押しても動じない。
逆に私の両手が、彼の片手に捕まってしまった。
これだと、ほんとに呼ぶまで離してもらえない。
呼ばなくてはいけないの?
水無月くんのことを名前で?
他に方法は…?
…ダメだ。
この状況についていけなくてそれどころでは無い。
「ほら、早く呼んでよ。“愛斗”って。じゃないとほんとに離さないよ?」
うぅ…
水無月くんが耳元で何回もそう話してくる。
もう、無理だわ…。
この状況から早く抜け出したい…。
私は決心した。
「…早く。呼んでくれないの?婚約者さん。」
水無月くんはすごく楽しそう。
