1ヶ月、そんな生活が続いた。

相変わらず、竜也を忘れた日なんてない。


もう、私に教科書を
借りに来ることもなくなってしまった。





私の変な噂が学校中で広まった。

まあ、噂じゃなくて事実なんだけど…




そんな噂を聞き付けて、
良いように私を利用する人もいた。

でも、それでもいい。

私を求めてくれるなら、それでいい。





放課後、教室で1人で待ってれば
誰かしら来るようになった。



汚れてしまった私。

でも、後戻りなんてできなかった。




今日も教室で誰かを待つ。




ガラガラガラガラ











竜也……






「 どうしたの…? 」



竜也と話すのなんて、懐かしいな。


何人と相手をしたかわかんないけど、
結局、竜也には適わないんだよな。




「 真凜… 」


真凜、なんて竜也から初めて呼ばれた。


どんなに気持ちいいテクニックを
されたときよりも、
竜也の一言の方がドキッとした。



「 ここでなにしてるの……? 」

今にも泣きそうな竜也が、弱々しく呟いた。




「 えっ…? 」


「 変な噂聞いちゃって…… 」

「 噂じゃないよ、事実だよ。 」



「 ………どうして? 」




「 竜也を忘れるため。
もう竜也のことを考えたくないの。
一刻も早く竜也を諦めるためだよ。 」



「 俺のせい、なんだね。 」


「 ……… 」



「 それで、諦められたの? 」

「 いや、まだ…… 」



「 じゃあこんなの意味ないじゃん!
自分を傷つけてるだけじゃん! 」



「 そんなに言うなら責任取れるの?
言葉だけでそんなこと言うの、
ずるいよ…無責任だよ…… 」



「 ……… 」


「 私のこと選ばないんでしょ?
なら竜也に関係ないじゃん!
私が傷つきようがどうでもいいじゃん! 」




「 …………… 」

「 …………… 」



「 たしかに、俺がこんなこと
言う権利ないんだけど…
真凜を選べないのに言葉だけ
良い人ぶったこと言ってるよ…… 」



「 ………… 」



「 でも自分でもわかんないんだよ!
真凜の変な噂聞いて、
いてもたってもいられなくて……
なんでかわかんないけど、
すごく胸が締め付けられて… 」



竜也に抱きしめられる。


ねえ、やめてよ…

優しくしないで…


あなたの暖かさに触れれば、
もう涙が止まらなくなっちゃう。

強がってた部分が壊れちゃいそう。



ほんとは、辛いの。こんな毎日…

助けてって言葉が出てきそうになる。





「 たつや……… 」



「 こんな、ムシャクシャした
気持ちになるなら、
真凜に出会わなければよかった…
真凜に教科書借りなきゃよかった…… 」



「 どうして、私に教科書借りたの…?? 」





「 そのときは、偶然だった…… 」



「 ふふっ、そっか。
なら元に戻るだけだよ。話したことも
なかった私たちに、戻るだけ。 」






「 でも、2回目は偶然じゃないよ 」


「 ……… 」


「 愛香のことで
心にぽっかり穴が空いたんだ。
彼女なんだけど彼女じゃないみたいで…
そんな時真凜か…… 」



ガラガラ



「 真凜ちゃん、今日は俺と…… 」


竜也の話の途中で、
1回体を重ねた男子が教室に入ってきた。



「 あれ?竜也?
今日はもう真凜ちゃん空いてないか… 」



「 待って!今日は家でヤろ。早く行こ 」


その人の腕を掴んで教室を出た。




「 真凜待てよ!
始まりはそうだったけど、
でも今は、大切なんだよ!!! 」



竜也の声が後ろから聞こえた。


でも、竜也の元には戻れなかった。





いざ、家に着いても、
なかなか体が動かなかった。




「 今日は、やめとく……? 」

「 ごめん、また今度でもいい? 」



男子を帰らせ、1人でベッドに寝転がる。




竜也はずるいよ。

私のところに来れないなら、
私のこと気にしなきゃいいのに。




それからも、いざ体を重ねようと
すると竜也の言葉が脳裏に浮かび、
結局体が動かず何もしない日が続いた。



あれから竜也とは話せてない。

話したくてもこんな汚れた私が、
竜也と話す権利なんてない気がした。





もう、自分の気持ちに素直になろう。

竜也と話してた自分が1番好きだ。



あの時の、黒い部分が
なにもなかったときの私が好きだ。




もう一度、竜也と話が
できるような自分になりたい。



その想いから、
今まで関係を持った人達とは断ち切った。



前の私に戻れば、
竜也とまた話せる気がして。