でも、


「いないね……」


 棚の中のものを全て出し、引き出しを全て開けても千帆の姿はどこにもなかった。


「仕方ないよ。さ、次の部屋行こう」


 落ち込んだ空気を変えようと、努めて明るく玉緒が言う。


 しかしそのとき。


 す……っ、す……っ


 着物を引きずる音が、どこからか聞こえた。