鬱々とした気持ちを抱えたまま、あたしたちがオババの家を出たのはもう昼前だった。


 真夏の太陽がじりじりと歩道のコンクリートを焼いている。


「……新菜」


 意を決したように、遥があたしの名前を呼んだ。


 しかし、その途端前を歩いていたはずの玉緒と美依が鬼気迫る顔でこちらに戻ってくる。


「……遥ッ、わかってるよね!?」


「う、うん……ごめん」


 その光景を、あたしは暑さで朦朧としながら見ていた。


 まるで千帆の棺がひっくり返ったときみたいだ。


 大事なことを、あたしはいつでも見落としている。


 ◇