そんな人たちの願いを叶えるため、花魁たちが選んだのが「自身が神様になる」ということだった。


 もちろん生きた人間が神様になることはできない。


 けれど紛い物の、カミサマになることはできる。


 そうして、自分の身を犠牲にしてカミサマになった花魁たちが、人々の願いを叶えるために始めたのが「裏はないちもんめ」。


 裏はないちもんめとは、もともと小指さえあればその持ち主ともう1度再会できるという儀式であったらしい。


「花魁は意中の人に小指を切り落として愛を誓う風習があったんじゃ。『小指のあるところに必ず戻ってきます』と――それが影響した儀式なんじゃろうなぁ」


 そう、オババは語った。