「カミサマ! こっち!!!」


 そのとき、あたしの視界にばっと飛び出したのは、玉緒の揺れるスカートだった。


 あたしより廊下に近い個室に入っていた玉緒は、そのままカミサマを引き連れると廊下へ駆け出す。


 また、何もできなかった。


 美依のときも、玉緒のときも。


 何もわからないまま巻き込まれた。だから、逃げられなくても仕方ない。


 そう、言い訳をしていた。


 でも違う。


 美依だって玉緒だって、わからないはずなんだ。この世のものではないカミサマに追いかけられて、心の底から怖いはずなんだ。