結論として、音楽室に千帆は隠れていなかった。


 グランドピアノも旋律を奏でてはくれなかったし、肖像画も歌い出したりしなかった。


 月夜に照らされた、ただ普通の音楽室がそこにあった。


「……なんか、何も起こらないね」


 決して何か起こることを期待していたわけじゃない。


 ただ、ゲームの始まりがあの地獄から響く声だったから、少し構えすぎていたみたいだ。


 美依も、


「最初から見つかるわけないわね」


 とクールに決めている。


「じゃあ次の部屋行こっか」


 そう言いながら、あたしが音楽室から一歩踏み出したときだった――。