千帆なんて、ただ小学生のとき仲良かっただけなのに。どうでもいいはずなのに。


 どうしてここに来てしまったんだろう?


 自分の意思でここに来たはずなのに、自分の意思がわからない。


「――私たちの話盗み聞きしてたのね。もう帰れないわよ。さ、行きましょ」


 いつの間にか隣に立っていた美依に声をかけられ、あたしは「ひっ」と小さく悲鳴をあげた。


 ちょっと◯ック行こうぜ、くらいの軽さで話す美依だが、今から行くのはリーズナブルでお財布に優しいファーストフード店ではなく夜の学校だ。


 古びたコンクリートの建物は、月の明かりに照らされて怪しく光っている。