コト


 と音を立ててあたしは花瓶を置いた。


 1輪のガーベラがその中で意思を持ったように揺れる。


「――玉緒」


 白い壁、白い天井、そして白いベッド。その中で眠る彼女は、まだ目を覚まさない。


 何度医者に診せても、眼鏡の実直そうな医者は首を横に振るだけだった。


「医学的に身体に問題はありません。精神的な何かが彼女の目覚めを妨げているんでしょう……」


 玉緒の手をそっと握ると、あたしは決意した。


 裏はないちもんめを、もう1度やるんだ。