物言わぬカミサマが、それでもあたしの息の根を止めようと動き出していた。


 これ以上、どうやって逃げればいいのか見当もつかない。


 ただ、少しでも時間を稼ぐ。そのためにあたしは椅子を持ち上げると、何度も何度もカミサマの頭に打ち付ける。


「――っ!」


 硬い金属の椅子を貫いたカミサマの爪が、あたしの眼前まで迫っていた。


 なにあの爪、まじやばい。


 物理法則ガン無視なカミサマに、改めてこの世のものではないのだと再確認しながら、あたしは自分に向かってくるその爪をどこかスローモーションで見ていた。


 避けなきゃ。――いや、避けられない。