.
……後でサクラさんが鈴木さん経由でこっそり教えてくれた事
「あれ、頂き物じゃなくて、イベント開始前に、宮本さんが、業者さんに頼んで自ら購入したらしいよ『どうしてもあげたい人がいるんで』って」
けれど、他のブースから、一つのクレームも出なかった。
それまでの、宮本さんの誠意ある柔軟な対応と働きぶりは、それほど完璧だったという事…と、鈴木さんは満足気に話していたらしい
「…ゆるネコびよりがブースに入るってわかって、俄然やる気が出たのかもね、宮本さん」
サクラさんは、そう言うけど……そこまで宮本さんの熱意に私が関わっているのかな?
.
バレンタインから1ヶ月後、久しぶりに宮本さんのおうちで過ごすホワイトデーの夜
「麻衣の太ももがすげー眠気を誘うから、ゲーム出来ない。」
私の膝に寝転んでゲームをしていた宮本さんはそのままギュウッと私のお腹に顔を埋めた。
「あ、あの…あんまり埋めないで頂けると…」
「……ああ、太ったのが戻らないから?」
「ぐっ!そ、それは…」
宮本さんにガトーショコラ丸ごとプレゼントしたバレンタイン。
あまりにもサクラレシピが美味しくて、私がほぼ、ワンホール食べてしまうと言う大失態
(そんなに食べればそりゃ太る)
だって、宮本さんが良いって言うから…。
口元隠しながら、私に『ほら、食べな?』って何度もケーキを差し出して…
……だから、つい。
何で私、こんなに欲に弱いの?(特に食欲)
こんなんじゃ、宮本さんが私を彼女にしておきたいなんて夢のまた夢の話になっちゃう…
と、そこから奮起してダイエットに励んでも、一度ついた肉は中々落ちてはくれなくて。今日も食事は控えめ。
「…麻衣のお腹グウグウ言ってるよ。『何で食わしてくれないんだよ』ってすげー訴えてる。」
ムクリと起き上がった宮本さんは、今度はギュウッと手足で私を抱きしめた。
首筋に埋まった口がクッと少し笑う。
「…ゆるネコのクッションよりやわらかい。」
「す、すぐ硬くなります!」
「そ?俺はどっちでもいいけど。」
「どっちでも…」
「うん。」
首筋にその薄めの唇がくっついてそれからそれが、顎、ほっぺたと順番に顔へと移ってくる。
最後にフワリと唇が重なってコツンとくっつくおでこ同士。
「…麻衣ならなんでもいい。」
静かに瞼を閉じ、弧を描く宮本さんの穏やかな表情に、気持ちが込み上げ、鼓動が心地良く跳ねた。
.



