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………はずなのに(どこかで聞いたセリフ)




「麻衣、ちゃんと髪乾かさないと。」

「………。」



お風呂上がり、ぐったりとローテーブルに突っ伏している私。



お風呂が後回しになって…ソファで幸せに満たされて…ボーッとしている私を抱き寄せてくふふと優しく笑った宮本さんが


「シャワー浴びる?」


そんなこと言いながら、優しく抱き寄せてくれて、起こしてくれて…暫く何度も何度も、触れるキスをされたり、鼻をすり寄せられたりされていて…手を引かれ行ったお風呂。


熱めのシャワーを注がれて……宮本の腕に包まれて……………また。



「……。」


…こうなってくると、本当に手を出されなかったあの一週間は一体…って…。



「ほら、もっと拭かないと。」


頭にフワリと新しいバスタオルがかけられた。



「……。」


言われるがままムクリと身体を起こすと、宮本さんの手がわしゃわしゃと私の頭を撫で始める。
その感触が優しくて、柔らかくて、気持ちがフワリと満たされた。




まあ…いいか、それは。
今、こうやって幸せだもん。
と言うか、あの時だって、幸せだった。宮本さんはずっと優しかったから。



「…麻衣の髪、こんなふわふわだった?」

「美容院で、少しパーマを…」

「そっか。最近忙しくて会えてなかったしね。」

「…はい。」



タオルごと引き寄せられて、コツンとおでこ同士がくっついた。



「…すっごい辛かった。」

「そ、そうだったんですね。やっぱり一課はお仕事大変ですね…。」



身体、壊さないで欲しいな…と心配し始めた私をクスリと宮本さんは笑う。



「仕事はね。いっくら大変でも辛くはないよ?」



少しだけ顔をあげた私に、フワリと唇をくっつけた。



「…でも、仕事忙しいと、誰かさんが、全然相手してくんないから。俺から連絡しなきゃなしのつぶてだしね。」

「そ、それは…あんまり邪魔しちゃいけないから…」

「何で麻衣からの連絡が邪魔になるんだよ。」


キュウッと気持ちが掴まれ、目頭が熱くなった。


…サラッとそんな風に言ってくれるなんて。



少しだけへの字の口になった私をまたくふふと笑い、「っていうかさ」と鼻をすり寄せる宮本さん。



「あんな勢いよく告白した人がよく言うよ。」

「あ、あれは…」

「ん?」



あの時、本当に必死だった。
今告白しなかったら後悔するって…

一週間という期限を付けてしまった事で、苦しさもあったけど…やっぱり告白して良かったって今でも思う。



「……私、偉かった。」


クッと笑う宮本さんの微少な吐息が私の唇をフワリと包んだ。


「んじゃ、偉いコにご褒美あげるよ。」


ご褒美……?

私を残し、立ち上がると、キッチンの戸棚から何かを出して帰ってくる。


「どーぞ。」とローテーブルに置かれたそれに、思わず目と口を同時に見開いた。



ゆるネコびよりの…チョコレート…しかも、この前デパートで見たのと同じだ。バレンタイン限定のやつ。


「ほら、俺、幕張のバレンタインイベント担当だったからさ。貰えたんだよ。で、一個持って帰ってきた。」


フリーズしたまま、チョコレートを見つめてる私の横に再び座って、私の代わりに宮本さんが缶を開ける。

そこには、ハート型と、キャラクター型のチョコが綺麗に収められていた。


「か、かわ…可愛い…」

「そ?食べてみれば?」

「そ、そんな!もったいないですよ!」

「や…でもさ…ってまあ、麻衣にあげたんだし、麻衣の勝手にすれば良いけど。」


そっと手に取り、思わず頬が緩んだ。
ゆるネコびよりなのも嬉しいけど、宮本さんがくれたって事に価値がある。



私の中では。



「…宮本さん、ありがとうございます。嬉しい!」



満面の笑みを見せた私に宮本さんは眉を下げ、ビールをコクコクと飲む。それをローテーブルに置くとスマホをいじり出だし、私の肩にもたれた。




「まあ…じゃあ、お仕事頑張った甲斐がありました。」




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