「みんな席近くていいな~!」
「休み時間に話にくればいいじゃない。」
「そうだけどさ~」
みなが少しふてくされている。
「次の席替えで近くなるかもよ?」
かおるちゃんがフォローしてくれている。
私はクラスのみんながどうしているのか気になり、周りを見回してみる。
まだ部活も始まっていないため、だいたいみんな教室で食べているようだ。
女子ばかりのグループ、男子ばかりのグループがほとんどだが、まばらに男女のグループもあるようだ。
ふと、一人の男子が目にはいる。
みんな誰かしら食べる相手を捕まえているのに、一人で食べていたからだ。
私は声をかけたいがどう声をかけたらいいのかわからずぐるぐると考えていた。
「どした?」
気づかないうちにじっと見てしまっていたようでみなに不信がられた。
みなが私の目線の先をたどり男子の姿を見つけると、ガタッとすぐに席をたって歩いていった。
「ねぇ、私らご飯教室で食べようと思ってるんだけど男子が一人で深山がかわいそーだから一緒に食べてくんない?」
とても上手な誘いかただと思った。
女子だけじゃないことをアピールしつつ、相手のプライドを傷つけない言い方だ。
「ありがとうございます。」
その子は嬉しそうにお礼を言ってみなと一緒に私たちのもとへとやって来た。
「僕も一緒に食べてもいいですか?」
「大丈夫だよ。」
「優、男子一人でかわいそうだったからちょうどいいよ。」
「俺はかわいそうじゃねぇし」
そのやり取りを聞いて、ほっとしたような顔をしている。
「ほら、さっさと食べないと休み時間あと15分しかないよ?」
かおるちゃんに言われて時計をみるとたしかにそんな時間になっていた。
「やばい!早く食べないと。」
みながあわててお弁当箱を出そうとして、落としそうになっている。
「もう!気を付けないとまたお弁当箱落としちゃうよ?」
「前も落としたことあるの?」
かおるちゃんに含み笑いで聞かれる。
「そうなんだよ。小学生の時の遠足でお弁当うっかりひっくり返してもう大変だったんだ。」
「ちょっと待って小学校から一緒なの?」
「そうだよ?」
「すごいね。」
「えへへ、仲良しでしょ~」
みなが自慢げにそう言ってくれて私は嬉しかった。
「ごめん、今更感すごいんだけど名前を教えてもらってもいいかな?体調悪くてあんまり聞けてなかったんだ。」
「あ、すいません、先に名乗っておくべきでしたね。角野 学と言います。気軽に角野と呼んでください。」
「わかりました。じゃあ、角野って呼ばせてもらいます。」
また、敬語で話してしまう。敬語がたまに混じってしまうのも私のよくないクセだ。
「二人とも固くね?」
深山に笑われてしまう。
「別にいいでしょ~」
少しふてくされながら返す。
みんなにクスクス笑われてしまった。
楽しいお弁当の時間はあっという間に終わり、午後からの授業が始まる。
外をぼんやりと眺めながら彼のことを考える。
やっぱり好きなのかな…
好きかどうかってみんなどうやって判断してるんだろう。
雲がどんどん流れていく。
キーンコーンカーンコーン
気づけば授業は終わっていた。
「ねぇねぇ、さっきの授業ぜんっぜん聞いてなかったでしょ。ノートも書いてなかったし」
かおるちゃんに指摘されてしまった。
「そんなに分かりやすかった?」
「うん。たぶんだけど先生も気づいてたと思うよ。」
「マジか…。めっちゃ考え事してたわ」
「そんな日もあるよね。」
「そう思うことにするよ」
帰りのHRで部活動体験が明日から一週間あるからしっかり考えて決めるように言われた。
やっと家に帰れる。色々あってなんだか疲れていた。
「みな~、帰ろ。」
みなに声をかけに行くと、みなの顔は真っ青だった。
「ごめん、なんか気持ち悪い…」
消え入りそうな声で言われる。
「大丈夫!?保健室行ってお母さん呼んでもらおう。立てる?」
「うん…」
みなの荷物をまとめているとかおるちゃんが気づいてくれた。
「うわ!みなの顔色悪!大丈夫?」
「なんか、気持ち悪いらしい。保健室連れていきたいんだけど、みなの荷物一緒に持っていってくれん?
私みなを支えながら歩くから。」
「わかった。」
みんなで保健室へと歩き出す。
みなに肩を貸しながら歩いていると、みなの手が熱いことに気がついた。
ガラガラッ
「先生」
「あら、どうしたの?」
柔らかくて甘い声を聞くと少しほっとしてしまう。
「熱があるみたいなんです。気持ちが悪いといっています。朝はすごく元気でした。」
「そうなの?とりあえずベッドで寝てなさい。親御さんに連絡して迎えに来てもらいましょう。」
「みな、お大事に。ゆっくり休んでちゃんと治すんだよ。」
「うん。ありがとう…」
かおるちゃんは深山と帰るので、保健室前で別れた。
1日目からいきなり一人で下校か…
美しい夕焼けが窓の外からオレンジの光をともしている。
家につく頃にはこの光の欠片もなく、暗い夜がやって来るのだと考えるだけで不安になってきた。
