「この音……バリケードの方からじゃないか?」

ネイサンの言葉を聞くなり、ロネはほうきを取り出して空へと舞い上がった。急いでバリケードの方へ飛んでいく。嫌な予感しかしない。

「あの魔女の娘を殺せ!!」

「平和を取り戻せ!!」

「森を焼き尽くせ!!」

街の人々が集まり、バリケードを壊そうとしている。その目に光はなく、まるで操られているようだ。

「何で……森に来るのは明日のはず!!」

何が何だかロネにはわからない。しかし、みんなに知らせなければとアテナの家へと急いだ。

「大変だ!!」

ロネがそう叫ぶと、ネイサンが「街の人が来たのか」と顔をしかめる。ナタリーは驚き、アテナは俯いた。

遠くからは街の人たちがバリケードを壊そうとする音が聞こえてくる。バリケードが壊されるのは時間の問題だ。あんなに殺気だった街の人をロネは見たことがない。だからか、体の震えが止まらなかった。

「ロネ、お前は今すぐアテナを連れて逃げろ」