舞い落ちる桜の花びらを眺めながら、私たちは自然と手を繋いでいた。
「ねえ、空。」
彼の名を呼ぶと、彼は愛おしそうにこちらを向く。
今から言うのは、私のわがまま。
「私の写真、撮って欲しいの。桜並木のトンネルに来た記念。」
桜並木のトンネルに来たら、誰かに写真を撮ってもらいたいと考えていた。
それを誰にお願いするかは行き当たりばったりで、通りすがりの人にお願いしようとか考えていたけれど、今は空が一緒にいる。
「俺、写真のセンスないけど、大丈夫?」
「平気平気。あのね、撮りたい構図があるの。」
「ここは写真スタジオか?」
そんなことを言いながらも、空は私のわがままに付き合ってくれる。
私は自分のスマートフォンを彼に手渡して、桜並木のトンネルの中へと彼を導いた。
「全身は写さなくていいからね。で、背景は全部桜色になるようにして……。」
「めっちゃ細かいじゃん。」
文句を言いながらも、カメラを構えてくれる彼。
私のポーズも決まった。
「撮るぞー。」
シャッター音が、桜の中で鳴り響いた。