「何でここ最近、俺の前で笑ってくれなかったの?ポンプ借りに行ってって頼んでも俺に直接渡してくれなかったし」

「そ、それは……」

社会人のくせにこんな感情を抱いていたなんて、話せない。でも幸野さんはますます手を絡めてくる。言うまで離さないと目が物語っていた私は仕方なく口を開く。

「その……モヤモヤしたんです。幸野さんが新人の看護師さんに教えてて、手を取っていて……」

私がそう言い俯くと、幸野さんは何も言って来なかった。私は恐る恐る顔を上げる。すると、幸野さんの顔も私みたいに真っ赤だった。

「何その理由、可愛すぎじゃない?無自覚なの?俺のこと殺す気?」

真っ赤な顔をしながら幸野さんはそう言ってくる。私が首を傾げると、「ああ、もう!」と言いながら幸野さんは私の頰を包んだ。

「好きな子以外の手に触ったって、こんな風にドキドキしたりしないの!!俺はすぐりちゃんじゃないと絶対ドキドキしない!わかった?」

惚れさせるって言ったけど、俺の方がどんどん好きになってんじゃん、と幸野さんは恥ずかしそうに言う。私の胸は高鳴って止まなかった。

幸野さん、大丈夫ですよ。私はあなたにドキドキしてますから。