「すぐりちゃん、俺に惚れてくれた?」

耳元でそんなことを訊かれ、私の胸はパンクしそうになる。ドキドキしすぎて体が熱い。私は慌てて口を開いた。

「ゆ、幸野さん!私は一人前になるまで恋はしませんよ」

私は幸野さんにアプローチされている。働き始めて二週間くらいで告白されて、でも私は仕事が慣れるまで恋愛はしないって答えたんだよね。それからずっと隙あれば口説かれてる。

「と言うか、今は仕事中ですよ!」

私がそう言うと、幸野さんは「うん。そうだね」と微笑む。そして私に言った。

「なら、ゆりりんを借りて来てもらおうかな」

「ゆりりんですね。わかりました」

ゆりりんとは、超音波で膀胱内の尿量を測定する装置。看護師さんから何かを借りて来てとはよく言われるし、幸野さんはよく私に仕事を頼んでくれる。これは嬉しい。

「すぐりちゃんのそう言うところ、好きだよ」

「幸野さん!仕事中ですから!」

ゆりりんは六階ではなく五階に置いてある。そのため、私は五階でエレベーターを降りることにした。降りる間際に幸野さんがまた私にこんなことを言う。