「門限のせいで全然アテナに会えないよ……」

ロネはポツリと呟く。頭の中には誰もが振り向く美貌を持ったアテナの姿があった。その顔を、声を、ここ数日は見たり聴いたりすることはできていない。

「私もあんまり会えてないな〜……。ねえ、アテナの家ってどこにあるの？」

ナタリーの問いにロネは何と答えたらいいか迷う。アテナの暮らしているのは人々が立ち入ることを禁じている森の中だ。アテナの正体をナタリーは知らない。

「アテナってどこの学校に通っているとか何も教えてくれないんだよね〜。何でだろ」

友達なのに、とナタリーは少し寂しげな顔をする。その顔を見てロネの心は揺らいだ。ナタリーならアテナの秘密を話しても気にせずアテナと接してくれるに違いない。ロネは話そうかと口を開いた。

「ナタリー、ロネ、おはよう」

ロネの言いかけた言葉は消えた。勇者の息子であるネイサン・サミュエルが話しかけてきたからだ。ロネとナタリーも挨拶を返す。