「し、知らなかった……」
呆然と答える私に、久喜さんは当たり前だとでも言いたげに頷いた。
「社内でも俺と社長と……役員の一部しか知らされていなかった計画だからな」
そこでふと、ずっと聞きたかった質問を私は思い出した。
「……久喜さんって、社長とどういう関係なんですか?」
ずばり、単刀直入に尋ねる。
「あー、うん、なんだ……」
すると、今までとは打って変わった、なんとも歯切れの悪い反応が返ってきた。
ここまで全てを打ち明けてくれているのに、これだけ教えてくれないなんてありえない。
「……はぐらかすおつもりで?」
ドスの効いた声で答えを強要すると、しぶしぶといった体で久喜さんが白状した。
「―――あれは俺の親父だよ」
「お、お父さんなんですか!?」
まさかの回答に驚きを隠せず、彼の腕の中だというのに跳ね上がってしまう。
「あー……なんと言うか、前の親父だ」
なぜか一瞬、久喜さんはバツの悪そうな顔になった。
そして、私が理解できるように、噛み砕いて丁寧に説明をしてくれた。
「中学に上がる頃にうちの両親は離婚したんだが、俺は母親に引き取られた。それからすぐに母親は再婚して、俺には新しい親父ができた。だから特に、今は関係がないといえば関係はない」
「で、でも……実のお父さんは……」
「そうだな。血のつながりがあるのは、あっちの親父だな」
思わず、ほう……とため息が出てしまった。
社長と久喜さんの掛け合いを見る限り、険悪な仲にはとても見えなかった。
でも多感な時期に両親が離婚してしまったことで、久喜さん的には複雑な思いを抱えているのかもしれない。
(会社の役員に親族がいるっていう噂も、あながち外れてはいなかったのかも……)
「まぁでも、社長のことは俺という人間を見るにあたって、それほど関係ないと思っている」
血の繋がった家族だというのに、久喜さんは社長の話になるととたんに素っ気なくなる。
やっぱり何か思うところがあるのだろう。
「でも、社長は久喜さんのこと、すごく信頼しているみたいでしたよ?」
人様の家庭の事情にまでズカズカと土足で上がりたくはないが、社長室でのやり取りを思い出してみても、そのことについてだけは自信を持って言える。
「……あとを継ぐ気はないよ。部屋でコーヒーを淹れることだけが楽しみの老後なんて、なんの張り合いもないだろう?」
軽く鼻で笑い飛ばしながらそう言うと、彼は私の体を抱きしめ直した。
呆然と答える私に、久喜さんは当たり前だとでも言いたげに頷いた。
「社内でも俺と社長と……役員の一部しか知らされていなかった計画だからな」
そこでふと、ずっと聞きたかった質問を私は思い出した。
「……久喜さんって、社長とどういう関係なんですか?」
ずばり、単刀直入に尋ねる。
「あー、うん、なんだ……」
すると、今までとは打って変わった、なんとも歯切れの悪い反応が返ってきた。
ここまで全てを打ち明けてくれているのに、これだけ教えてくれないなんてありえない。
「……はぐらかすおつもりで?」
ドスの効いた声で答えを強要すると、しぶしぶといった体で久喜さんが白状した。
「―――あれは俺の親父だよ」
「お、お父さんなんですか!?」
まさかの回答に驚きを隠せず、彼の腕の中だというのに跳ね上がってしまう。
「あー……なんと言うか、前の親父だ」
なぜか一瞬、久喜さんはバツの悪そうな顔になった。
そして、私が理解できるように、噛み砕いて丁寧に説明をしてくれた。
「中学に上がる頃にうちの両親は離婚したんだが、俺は母親に引き取られた。それからすぐに母親は再婚して、俺には新しい親父ができた。だから特に、今は関係がないといえば関係はない」
「で、でも……実のお父さんは……」
「そうだな。血のつながりがあるのは、あっちの親父だな」
思わず、ほう……とため息が出てしまった。
社長と久喜さんの掛け合いを見る限り、険悪な仲にはとても見えなかった。
でも多感な時期に両親が離婚してしまったことで、久喜さん的には複雑な思いを抱えているのかもしれない。
(会社の役員に親族がいるっていう噂も、あながち外れてはいなかったのかも……)
「まぁでも、社長のことは俺という人間を見るにあたって、それほど関係ないと思っている」
血の繋がった家族だというのに、久喜さんは社長の話になるととたんに素っ気なくなる。
やっぱり何か思うところがあるのだろう。
「でも、社長は久喜さんのこと、すごく信頼しているみたいでしたよ?」
人様の家庭の事情にまでズカズカと土足で上がりたくはないが、社長室でのやり取りを思い出してみても、そのことについてだけは自信を持って言える。
「……あとを継ぐ気はないよ。部屋でコーヒーを淹れることだけが楽しみの老後なんて、なんの張り合いもないだろう?」
軽く鼻で笑い飛ばしながらそう言うと、彼は私の体を抱きしめ直した。

