へたくそなキスのままがいい



……昔から、ね。


その言葉に、弱いかもしれないと思った。

次また同じことを言われても、私はきっと言葉を飲み込むことしかできない。



廉のその呟きには、気づかないふりを決め込んだ。


至近距離でジト目で見られても無視。それしかもう、いまの私には方法がないから。



「あ、紗和ちゃんがいるーっ!」

「……げ、ユウくん」


ちょうど廉にひと通り教え終わったタイミングで、すこぶる面倒なお客様の声が私の名前を呼んだ。


思わず顔をしかめた私に、その人は「げ、とはひどいなぁ」とニコニコして近づいてくる。